7%
1% のジョブのリバランスで 7% のコスト削減
選択肢が豊富で、現場の急なリクエストに対応
開発担当だけでなく、IT 担当も積極的に活用
概要
世界有数の半導体メーカーであるキオクシア株式会社は、製品開発・製造過程で HPC を活用しています。同社は HPC の活用においてピーク対応などで、リソースの柔軟性に課題を感じており、それを解決する目的で アマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用。AWS Direct Connect を用いてオンプレミス環境と AWS をセキュアに接続し、ニーズや負荷に応じてジョブを振り分けることで、課題を解決。また、クラウドへのリバランスで約 7% のコスト削減を実現しています。
ビジネスの課題 | チャレンジ精神を持ち続け、最先端のメモリ技術・製品を提供
キオクシアは、「『記憶』で世界をおもしろくする」というミッションのもと、フラッシュメモリ・ SSD を中心としたさまざまな製品を生み出しています。生産性も業界有数で、三重県四日市市には世界最大級のフラッシュメモリ工場を有しています。30 年の歴史を持つ同工場は、AI をはじめとした最先端のスマートファクトリーとしても知られ、非常に高い生産力・生産効率を誇ります。
キオクシアホールディングス 執行役員 情報セキュリティ統括責任者の川端利明氏は、キオクシアを「競争の激しい半導体メモリ業界で若いベンチャー企業のような勢いを保ちながらチャレンジを続けている企業」と説明します。
「半導体市場は技術革新が非常に早く、変化の波も大きい領域です。当社は東芝時代の 1987 年に世界初の NAND 型フラッシュメモリを発明し、2007 年にも他社に先駆けて 3 次元積層構造を発表しました。利するところがあればボトムアップでどんどん取り組もうという精神を持ち、最先端の IT も積極的に活用しようという体制が整っています」(川端氏)
クラウド活用もその一環です。同社は、新しい技術を前向きに採り入れてきました。ただし川端氏は、「どのように安全性を保つかという点は、非常に厳しく精査しています」と、セキュリティ対策の重要性も強調します。
HPC は特にクラウドのニーズが高く、セキュリティさえクリアすれば、メリットを最大限に生かせる分野です。即時性があり、選択肢の幅を広げ、BCP としても役に立ちます”
川端 利明 氏
キオクシアホールディングス株式会社 執行役員 情報セキュリティ統括責任者
ソリューション | 半導体メモリ製造に欠かせない HPC。ニーズの揺らぎをクラウドで吸収
他の製造業と同様に、半導体メモリの設計・製造には IT が欠かせません。特にメモリのデザインやシミュレーションといったエンジニアリングにおいて、コンピューティングは不可欠です。半導体メモリは設計が非常に複雑であり、かつ製造工程も複雑であることから、初期段階から IT を活用し、業務の省力化や歩留まりの向上を図っています。
基礎エンジニアリングにおいては、特に強力な計算処理能力、HPC で、設計した回路が適切に稼働するかどうかのシミュレーションや、製造工程での現象を再現してトラブルを予兆しています。特に HPC パワーを必要とするのが、「フォトマスク」と呼ばれる製造部品の設計です。
半導体メモリの製造では、半導体基板材料(ウエハー)へ光(紫外線)を超高速に照射して、あたかも写真の現像のようにフォトマスクのパターンを転写しています。紫外線の波長(約 300nm)よりも細い回路(~数十 nm)を形成しなければならないため、元となる回路設計を補正して正しく製造できるようにフォトマスクは設計されています。この設計でシミュレーションを繰り返す必要があるため、HPC の計算処理能力が必要というわけです。
キオクシアでは、大規模な オンプレミスHPC 環境を整備して、さまざまな計算処理ニーズに応えています。長年の経験があるため、市場や技術の変化に応じて適切なリソース強化を図るノウハウを有しています。しかし、全体的なニーズには応えられても、どうしても細かなスパンのピークや、トラブルへ対応するための追加ニーズへ応えるリソースをあらかじめ確保しておくことが課題でした。
「しっかり計画してリソースを用意し、適切に分配していますが、それでも年に数回は外的要因などでイベントが発生し、いずれかのプロジェクトに待機を要請したり、別の解決策を講じてもらったりすることがありました。HPC とは、ヒトの能力を代替して負荷を軽減し、コストを最適化するために用いるものです。逆にリソース不足に陥ると、ヒトが知恵を絞って対応せざるをえず、人的コストが増大してしまいます」と、キオクシア メモリ事業部 メモリ設計技術統括部 第三メモリ設計部 メモリリソグラフィ担当 参事の髙橋均成氏は語ります。
そこで解決策として検討したのがクラウドサービスです。同社が独立したころからさまざまなサービスを調査し、すでに主要なサービスとして人気のあった AWS に注目しました。半導体メモリ開発は以前から Solaris や UNIX ベースの環境が多く、AWS にはそれに近しいコンポーネントや API が揃っているため、ベテランエンジニアほど親和性が高い・経験が生かせそうだと髙橋氏は判断しました。
アーキテクチャ
導入効果 | 総スペックを左右する 1% のジョブ。クラウドへのリバランスで 7% のコスト削減
キオクシアでは、大規模な HPC 環境のうち AWS に処理を委譲できる一部の基盤を、AWS Direct Connect を介して AWS へ接続しています。プロジェクト全体の計画がまとまったら、オンプレミスのジョブスケジューラにジョブを投入し、規模や必要性に合わせてオンプレミス HPC と AWS へ割り振ります。AWS 上のリソースは起動しておらず、ジョブが稼働するとき自動的に立ち上がる設定になっており、コストを最小限に抑えています。
「HPC のジョブを精査したところ、フォトマスク設計全体の 1% が必要となるスペックを左右していました。この 1% のジョブを AWS へ割り振れば、負荷やコストを最適化できます。概算ですが、この 1% をリバランスすることで、7% のコスト削減を達成しました」(髙橋氏)
キオクシアでは、高性能ストレージの Amazon FSx for Lustre を活用しています。これは既存のアプリケーションが高いディスク I/O を必要とする設計になっており、高スループットな Amazon FSx Lustre が最適だったためです。
AWS を導入したことで、急なトラブルや現場の要求に対して「慌てずに対応できる」と髙橋氏は効果を語ります。以前は現場担当者から急に依頼があっても、他部門との調整で解決に時間がかかることもありました。今は AWS のリソースがあるため、その場ですぐに判断して対策を講じることができるといいます。
また部内の IT 担当も、AWS であれば容易にさまざまな取り組みを試せるとあって、積極的にアーキテクチャを設計したり、環境を試験したりと、オンプレミスでは実現できない価値を享受しているといいます。
AWS 採用における、重要なポイントがセキュリティです。極めて機密性の高い設計情報を扱うため、セキュリティ対策は慎重に検討されました。同社は、AWS の Well-Architected フレームワークに基づいた 256 項目に及ぶチェック項目を精査し、注意すべき点を明確にしました。
「私たちがこれまで実践してきたセキュリティ対策やルールが、クラウドでも十分に機能することが判明し、安心するとともにクラウド活用で取り組むべきことがまとめられました」(川端氏)
キオクシアでは、AWS についてさらに深く学び、ノウハウやスキルを向上して、高度に使いこなしていきたい意向です。
「セキュリティの課題さえ解決できれば、クラウドはよいところが多い理想の環境です。AWS はサポートも親身で、私たちの細かな質問や要望にも的確かつすばやく応えてくれました。HPC は特にクラウドのメリットを最大限に生かせる分野です。即時性があり、選択肢の幅を広げ、BCP としても役に立ちます。私たちの開発計画を強力に支援してくれる存在です」(川端氏)
詳細
カスタマープロフィール:キオクシア株式会社
ご利用中の主なサービス
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
Amazon FSx for Lustre
Amazon FSx for Lustre は、コンピューティングワークロードに、コスト効率の高い高性能でスケーラブルなストレージを提供するフルマネージドサービスです。
Amazon EC2 Auto Scaling
Amazon EC2 Auto Scaling はアプリケーションの可用性を維持するうえで役立ち、お客様が定義した条件に応じて EC2 インスタンスを自動的に追加または削除できます。
AWS CloudFormation
AWS CloudFormation では、プログラミング言語またはシンプルなテキストファイルを使用して、あらゆるリージョンとアカウントでアプリケーションに必要とされるすべてのリソースを、自動化された安全な方法でモデル化し、プロビジョニングできます。
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あらゆる業界のさまざまな規模の組織が AWS を活用してビジネスを変革し、日々ミッションを遂行しています。当社のエキスパートにお問い合わせいただき、今すぐ AWS ジャーニーを開始しましょう。